デルタ関数
微分形のガウスの法則の右辺には電荷密度 が出てくる . 電荷密度 は位置の関数である . 場所によって電荷の密度が決まるという意味である .
多数の電荷が雲のように集まった状態を遠くから眺めるような場合には , このような密度による扱いは大変役に立つ . ところがもっと対象に近付いて , 電荷を持った個々の粒子について論じようとすると , この形式はやっかいである .
粒子に有限の大きさがあると考えるような場合ならば , 電荷が内部に一様に分布していると考えたり電荷密度が中心からの距離の関数として表せるなどと仮定することも出来るだろう . しかし素粒子について論じるときや , 他のものに対して大きさが無視できるとする場合などのように粒子の大きさが一点であると考えたい場合には密度は使えない . 電荷を持つにも関わらず粒子の大きさが 0 であるということは , 電荷密度が一点のみで無限大になることを意味するからである .
お気楽解決
そこで登場するのが「 デルタ関数 」である . 電荷密度が一点で無限大になるなら , それをそっくりそのまま表してやる関数を作ってやればいい , というわけだ . その定義は次の通りである . 関数の中身が 0 になる時に値が無限大になるので , の点に電荷が存在することを表したければ としてやればいい .
本当にこんな単純に電荷密度を表しただけで問題が解決したのだろうか ? いや , まだまだ問題がある . 電荷密度をある範囲で積分すれば , その範囲にある全電荷量が求められるはずだ . だからこのデルタ関数を積分した時には , ちゃんとその一点に存在する電荷量が求められなければいけないはずなのである . そこでお気楽に次のような条件を加えておこう .
「 を を含む範囲で積分した結果は 1 になる . 」
なぜ積分の結果が 1 になるようにしたかというと , こうしておけば , 電荷 が の点に存在する時の電荷密度を表すのに という具合に書いておけるからである . これを積分すれば , 結果は になって , ちゃんと積分範囲に含まれる電荷の大きさが導かれるというわけだ .
まぁデルタ関数なんてのは上で説明したくらいのものなのだが , 一点だけで無限大で , 積分すると 1 になるなんてイメージがわかないという人がいるかも知れないのでちょっとだけ補足しておこう .
次のような関数を考える . が 0 から 1 までは値が 1 で , それ以外は 0 となるような関数だ . 下に図を付けておこう . これを積分すれば値は 1 になる . なぜなら , 積分は関数が作る面積だから .
この関数のでっぱりの面積を一定にしたまま幅を狭くしてやって , 幅を極限まで 0 デルタ関数とその性質 に近づけたものがデルタ関数だと考えればそれほど無理な考えでないことが分かるだろう .
しかしこのイメージが全てだと考えていると失敗する . 例えば , なんて関数も積分の値は デルタ関数とその性質 の値に関わらず 1 になる(複素関数論を使って計算する)し , 関数は の極限では に比例する形の関数になるので分子と分母で打ち消しあって有限の値 になる . そこで デルタ関数とその性質 の極限を取ることでデルタ関数と似た性質を実現できる .
私が学生の頃の話だが , 講義の中でいきなり上に出した 関数による近似式を使われたので , 「なぜデルタ関数をそうやって変形できるんですか ? 」と質問したことがあるが , 「そんな当たり前のことも分からないのか ? 」と笑われただけだという苦い思い出がある . ああ , やだやだ .
戸惑う数学者
こんな関数を考え出したのは一体誰かというと , あのディラックである . ディラックの名前はこの後の解説でもあちこちで出てくる予定だが , 変なことをする天才である . 彼の論理は非常に危うくて大胆だが間違っちゃいない , というので , 「アクロバティック(曲芸)・ディラック」という異名を取るほどだ . その内 , 分かる . (笑
(ディラック方程式 , ブラケット記号 , モノポールの存在仮説 , 巨大数仮説など)
さて , デルタ関数などという奇妙なものを関数として認めてしまうと , これまで関数の性質として論じていたことが当てはまらない事柄が出てきてしまい , 数学的にいろいろな不都合が発生してしまうことになるらしい . (どういう不都合かは私には詳しく語れない . )しかし , デルタ関数が便利に使えて , 論理的に破綻しているわけではないのも確かだ .
そこで数学者は渋々これを認め , これは関数とは別のものであるという意味合いを込めて「超関数」というものに分類することにした . 英語では distribution と呼ばれており , function とは別物扱いだ . 日本語の「超関数」という表現は意味を捉えたものであって的外れというわけではない . そしてこれは数学の一分野にもなった .
この関数はここに書いた以外にも微分ができたり , フーリエ変換ができたりと , なかなか面白い性質があるのだが , とりあえずはこれくらいの理解で十分であろう . 興味のある人は調べてみるといい .
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のような場合、つまり無限大(+∞)への「 発散 」
x に対して、0<|x-a|<δならば f(x)>M 」。
P.S.4 「∀」という記号 は、「すべての」というよりは「あらゆる」という意味、つま
うより、 「Any」(=あらゆる,いかなる)の頭文字「A」の逆 と考える方が
2009年5月 5日 (火) 15時04分 数学 | 固定リンク | 0
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「数学」カテゴリの記事
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(2022.05.21) (2022.04.02) (2022.03.19) (2022.03.05) (2022.02.08)
あの 言葉だけではわかりにくいのですが
リミットxが限りなくちかずくとき
サインx分のxって1らしいのですが
私は1+0だとおもうのですが
どうでしょう?
投稿: Uguisugarasu | 2011年2月 デルタ関数とその性質 4日 (金) 20時49分
違ってたらすみませんが、文体と内容から考えて、
高校生くらいでしょうね。
あるいは、中高一貫教育の優秀な中学生とか。
「x→0 の時、x/sin x →1」
というのは、高校・数Ⅲの極限の基本。
「1らしいのですが 私は1+0とおもう」ね。
なるほど、そう言えば僕も高校時代、
似たような事を考えてた気がします。
ただ、関数の値の方には、「1+0」という
書き方が無いんですよ。
この場合だと「x/sinx →1+0」とは書かない。
意味は分かるし正しいけど、慣習とか約束事の問題。
理由は知りませんが、そうした書き方は変数の側だけです。
例えば、「x→2+0」とか。
右方極限とか右側極限(値)と呼ばれるものを
求める時の書き方ですね。
ひょっとすると一部の専門家が、論文や講義の中で
新たに定義して、関数の値の方にも「+0」という
書き方を使ってる可能性は一応あります。
ただ、学生がテストで書くと減点されるかも
知れないので、避けた方が無難でしょう。
もし書くとしたら、記述試験の難問で、答案の中で
新たに自分で定義した後でしょうね。。
投稿: テンメイ | 2011年2月 5日 (土) 07時30分
投稿: gauss | 2011年2月 6日 (日) 20時59分
数学のいい所は、理論的完成度の高さだけじゃなく、
それがずっと持続することですね。
数十年~数千年のレベルで。
これに匹敵するのは、論理学や物理学の基礎理論、
あるいは伝統的宗教くらいでしょうか。
そういった内容で、一度きっちりした記事を書いとくと、
数年後にも価値が持続し、読者が集まって来る。
簡単なやり取りでも嬉しいし、刺激にもなりますね。
今回の質問なんて、初々しくて微笑ましい♪
論点がズレるけど、その極限値だけで何か
記事を書いてみようかなって気にもなります。
ただ、理論と違って、自分の記事の価値を持続させるには、
Googleとか、検索サイトの評価を保つ必要がある。
これが大変なタダ働きなわけです。
周囲の冷たい視線に耐えるのも大変な苦行 (^^ゞ
正直、実態は「さわやか」さとはかけ離れてますね。
見返すためにも、有名ブロガーとして成功してやろうと
思ったりしますが、5年半頑張ってもまだ程遠い状況。
肩の力を抜くのがいいか、あるいはもっと入れるべきか、
迷い続ける小市民ブロガーの毎日です。。
微分の性質・公式など
$$や$$は「変化量」という意味があった。微分を行う時は、$$を0に近づける(連動して、$$も0に近づく)。このようにここから先の計算ではしばしば、$$や$$に「変化量」という意味に加えて「0に近づく」という属性が加わる。この「0に近づけていく変化量」という量を表すために、新しい記号として$\mathrm dx,\mathrm dy $を導入しよう。つまり、$\Delta$の替りに$\mathrm d $という記号を使って 後で$\to0$という極限を取ることが約束されている変化量 を示すことにする。本講義で$\mathrm dx $とか$\mathrm dy$ のように$\mathrm d $のついた量は、すべて「微小変化」を表現する量である。
$\mathrm dx$や$\mathrm dy$を「微小変化」と呼ぶが、この呼び方は少し説明が不足していて、単に「微小」ではなく「0になる極限を取る」という点が重要である。
上の図にも示したように、$\mathrm dx$や$\mathrm dy$はあくまで、 のような「接線と同じ傾きを斜辺とした直角三角形」の底辺と高さだと考える(この考え方なら微小である必要はない)。そして、$\mathrm dx$ や$\mathrm dy $そのものの大きさは重要ではなく、 という形(どんな直角三角形か?)、あるいは「$\mathrm dx$ と$\mathrm dy $の比」が重要であって、$\mathrm dx$ や$\mathrm dy $そのものは大きさを考えてはいけない(考えても意味はない)量とする。いわば、「接線上で定義された長さのようなもの」が$\mathrm dx$ と$\mathrm dy$ であり、それぞれ一つだけでは意味がなく、「$\mathrm dx$ と$\mathrm dy $の二つで向きを表現する量」なのである。
$<\mathrm dy\over \mathrm dx>$は普通の数(大きさを考える意味がある)だし、$\mathrm dy=a\mathrm dx$と書いた時の$a$も普通の数である。だから$<\mathrm dy\over \mathrm dx>=2$や$\mathrm dy = 0.7\mathrm dx$は意味のある式である。しかし、$\mathrm dx=1$とか$\mathrm dy=0.02$などという式には全く意味がない =0だけは、「$\mathrm dx=0$の極限をとって」のように使うこともあるが、本来はあまりよい使い方ではない。 。$\mathrm dy$ や$\mathrm dx $は、二つがペアになって接線の向きを表現している量であって、$\mathrm dx$ のみの大小を云々してはいけない。
新しい記号を使えば、接線の傾きは$<\mathrm dy\over \mathrm dx>$になる $\mathrm dx$や$\mathrm dy$は、接線という直線の上での長さを表現しているという考え方もできる。 。この$<\mathrm dy\over\mathrm dx>$、厳密に書けば
が導関数(もしくは微係数)である。$\mathrm dy$ と$\mathrm dx $は微小量、すなわち0になる極限を取るべき量だが$<\mathrm dy\over \mathrm dx>$は有限な量である。
\begin \mathrm dy=2x\mathrm dx+(\mathrm デルタ関数とその性質 dx)^2 \end
と書きなおす。この式の$\mathrm dx\to0,\mathrm dy\to0$の極限を考えると
となって0=0という「当たり前すぎてつまんない(trivialな)式」が出る。何の情報も引き出せない。$\mathrm dy$と$\mathrm dx$の比のみが重要なのだから、まず両辺を$\mathrm デルタ関数とその性質 dx$で割って
「$\mathrm dx$というのは$\mathrm dx\to0$という極限を取られることを運命づけられている量であることを考えると、右辺第二項の$(\mathrm dx)^2$をこれ以上計算する必要はない」と考えて
\begin \mathrm dy= 2x\mathrm dx \end
\begin y+\mathrm dy = (x+\mathrm dx)(x+\mathrm dx) \end
になる。そして「あ、この中には$x\mathrm dx$が2個あるな」と考えれば、右辺は$x^2+2x\mathrm dx$となる。
次に図解で考えよう。一辺$x$の正方形の面積Sは$S=x^2$という式で表現できる $y=x^2$ではなく$=x^2$としたが、これはこの図の場合$x^2$に「面積」という意味があるからである。どんな文字を使うかは本質とは関係ない。 。この式を微分した結果の導関数が$<\mathrm dS\over \mathrm dx>(x)=2x$であることは、
という図から理解できる。この場合、正方形の「縦」の変化による面積変化$x\mathrm dx$と、「横」の変化による面積変化$x\mathrm dx$の足算が面積変化$2x\mathrm dx$となっている。$\mathrm dx^2$の部分は無視されている。
Excel(エクセル)での偏差と分散の計算方法や関数について|VARP関数の使い方
エクセル
Introduction
Ver. all 2013 2016 2019 365
偏差とは・・・データとその平均値がどれだけ離れているかを示す(平均値との差)
分散とは・・・複数の数値のばらつきを表す
150-170=-20 170-170=0 190-170=20
(-20) 2 =400 (0) 2 =0 (20) 2 =400
分散を求める関数
引数に分散を出したい3つの数値を選択して、 [OK]をクリック すると、
- VAR.P関数・・・母集団全体から分散を計算する(文字列のセルは無視する)
- VAR.S関数・・・母集団を標本として予測した分散を計算する(文字列のセルは無視する)
- VARA関数・・・母集団を標本として予測した分散を計算する(文字列のセルも含める)
- VARPA関数・・・母集団全体から分散を計算する(文字列のセルも含める)
「標本として」という言葉が出てきますが、これは選択した範囲のデータをサンプルとして扱い、予測も含めた計算をするという事。
ここでちょっと待ったです。
実は VAR.P関数を使うならば「VARP関数」を使用した方が良い と思うのです。途中に「.」ピリオドがあるか無いかの違いですが、VAR.P関数はバージョン2010から名前が変更された関数で、2007以前はVARP関数でした。
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